35.白杖
小さい頃、
母以外の視覚障害者に会ったことがありませんでした。
しかし高校生になって、
実は私の家の隣の方も白杖を持っていることを知りました。
30代くらいの男性だったと思います。
こんな近くに視覚障害者がいたわけですが、
灯台下暗しとはよく言ったもの。
私は、
その方が白杖を持って外へ出かけていたことに驚きました。
今でこそ、
視覚障害にも軽度から重度まであることや、
全盲であっても、
杖や盲導犬を使って出かける人がいるのを知っていますが、
当時の私は、
「白杖を持っている人=母」
であり、
誰しもが母のように介助が必要だと思っていました。
ある日、
その方が家の前の道路で立ち止まっていたので、
私は「一緒に行きましょうか?」と声をかけると、
「一人で行けますから大丈夫です」と、
白杖をコンコンと突いて行ってしまいました。
私は、
「白杖を持っているのに見えているのかな…」と不思議で、
もしかしたら母もそうかもしれないと、
相変わらず期待したことを覚えています。
それくらい障害について無知だったのです。
その方は、
隣の家に住まれていたものの、
我が家との交流はありませんでした。
私は、
母の障害について調べることもなかったので、
障害への理解も持ち合わせていませんでした。
今、改めて思うのは、
病気に対する正しい理解は、
家族の不安を救う一助になるということ。
家族の誰かが、
母の障害をよく理解しているというのは、
母にとっても安心だったはずです。
母一人で背負うには重たいものも、
二人や三人で背負えば、
心も楽になると思います。
もちろん現実生活のサポートを父はできる限りしていたので、
それ以上を求めるのは酷だったかもしれない。
私は時を経て、
母の病気のことを少しずつ勉強したけれど、
やっぱり気持ちが向かなかった。
この根っこに何があるかを知らないままなので、
ずっと目を背けていたとも言えます。
知らないことは
あなたに出されたクイズ
不思議の謎は
解かれるその日を待っている
世界が歪んで見えるなら
本を一冊開くといい
人が醜く見えるなら
皺の美しい年寄りに話を聞くといい
知る方法は
本当はいくらでもどこにでもある
あなたが知りたいと思えばね
