57.紀元前2000年
紀元前2000年頃、
ロメオという男の子がいました。
その日はロメオ5歳の誕生日で、
魚の尾頭付きのごちそうでした。
父は椅子に座って気難しい顔で考え事をしています。
母は先天性で口がきけませんでしたが、
台所から鶏と遊ぶロメオに微笑みかけていました。
少し時が流れて、
ロメオが7歳になった頃、
父は町の不穏な空気を感じ、
「いつか町が分裂する戦争が起きるかもしれない」と、
その日に備え作戦を練っていました。
ある夜ロメオが寝静まったのを見て、
母に近々作戦を決行する話をしました。
しかしロメオは寝ておらず、
それを陰で聞いていたんです。
次の夜、
町の権力者たちがロメオの家に夜襲をかけてきました。
父は不意を突かれ殺されました。
父を殺したのは、
ロメオと仲良しだった友達の父親でした。
母は連れて行かれ、
ロメオと鶏だけが残されました。
その日からロメオは誰も信用しないと固く誓い、
生きることに何の歓びもなく、
ただただ虚しい毎日を送っていったんです。
実はロメオは仲の良かった友達に、
父の作戦の話をしてしまったんです。
だから友達が父親に作戦の話をしてしまい、
それが夜襲につながったのだと思い込みました。
ロメオは父や母がいなくなってしまったことを、
自分のせいだと思いました。
やがてロメオは25歳になり、
町のどこに行っても相変わらず続く言い争いに嫌気をさし、
町を出て洞窟で暮らすことにしました。
時々仲の良かった友達が訪ねて来ましたが、
口も聞きませんでした。
そして35歳の時、
最後の戦争が起きました。
ロメオは争いが嫌で戦争からずっと逃げていました。
しかし友達が何度もロメオを訪ねて来てくれたので、
勇気を振り絞って一度だけ応えようと、
白い布で正装をして、
盾と石斧を持って戦地へ赴いたんです。
しかし戦争は既に終わっていて、
そこには誰もいませんでした。
ロメオは知っていたんです。
戦争が終わっていたことを。
臆病風に吹かれて、
ずっと現地に行けなかったんです。
ロメオは向かい風を受け、
海に沈む夕焼けの美しさにやっと争いが終わったことへの安堵と、
何もできなかった自分の不甲斐なさを恥じました。
そして49歳で死ぬ直前、
もっと楽しい人生が送りたかった。
もっとたくさんの人と関わりたかったと後悔してむせび泣きました。
そして、
これまでの満たされない思いを満たすために、
砂を食べて死にました。
前を向けない時
今を生きられない時
過去に生きたっていいんだ
どこを探せばいいのか
なにを探せばいいのか
自分がなにをしたいのかまったくわからなくても
時薬がそのヒントをくれることがある
焦らず急がず
生き続けてみれば分かることがある
だけどそれは
自分の心の中にしかない
本当に自分に向き合った時にしか分からない
