33.高校だけは出ておきなさい
音楽との出会いは、
私を救ったことの一つと言い切れます。
それは、
音楽が心を解放してくれただけではなく、
私を導いてくれた出会いがあったのです。
当時、
私はあるミュージシャンに傾倒していて、
CDや廃盤になったレコードを買い漁り、
コンサートにもよく行っていました。
コンサートグッズは、
ほぼ全てを購入するほどの熱の入れようでした。
今思えば、
高校生の男子がちょっと異常ですね。
私はそのミュージシャンに会いたい一心で、
色々と調べたんです。
そういう時の執着心はすごくて、
徹底的にやる性格かもしれません。
ストーカーですね。
そして偶然にも、
実家の住所と電話番号を知ることができたんです。
当時はインターネットもないし、
まだ個人情報保護法ができる前のこと。
手に入れた電話番号は、
本当か嘘か、
私はドキドキしながら電話をしてみました。
するとお母さんが出て、
「突然すみません私は◯◯さんのファンなんです」
と切り出しました。
お母さんはそういう電話がたくさんかかってくるからか、
「ちょっとお父さんに代わりますね」
と保留にしました。
私は怒鳴られるかもしれない・・・と、
ビクビクしながら待ちました。
そしてお父さんが電話に出ました。
「もしもし…」
私はそのミュージシャンが好きで、
将来歌手になりたいと思っていること、
今行っている高校は何も楽しくないので辞めようかと思っていることを話しました。
するとお父さんは優しい声で、
「高校だけは出ておきなさい」
とおっしゃられました。
私はそれまで、
誰にも言わず一人で悩んでいたことを、
お父さんの一言で、
高校だけは絶対に卒業しようと強く思ったんです。
突然の電話をお詫びして、
電話を切り、
感謝の手紙を送りました。
すると何日か経って、
お父さんから「頑張ってください」と、
手紙が届きました。
とても嬉しくて、
今でも大切にとってある…はずだったけど、
見つからない…
捨ててなければいいんですが…
お父さんすみません…
高校を辞めたいなんて両親には言えませんでした。
親の負担が少なくなるように県立を選んだけれど、
それでも入学するのにそれなりにお金はかかっているし、
親の気持ちを考えたら言えるはずがありません。
好きなミュージシャンのお父さんとはいえ、
私は見ず知らずの大人に人生相談をしたあの日初めて、
人に胸の内を話したと思います。
お父さんはきっともう覚えてないと思いますけど、
私にとって本当に感謝し尽くせない出来事でした。
かじかんだ手は
ストーブで温めたり
手袋をして
寒さをしのいだりすることもできる
でも
誰かに手を握ってもらうことは
ストーブや手袋では得られない多幸感を感じられる
人と人との出会いは
何にも勝る良薬なんだ
